覆輪(フクリン)留めとは  意味・メリット・デメリット

 

覆輪(フクリン)留めとは

宝石の留め方の中で代表的なものに「覆輪(フクリン)留め」があります。

覆輪(フクリン)留めとは、筒状の金属の中に宝石をはめ込み、宝石の周りの金属を一周倒して留める石留め技法です。

英語では、ベゼルセッティング(bezel setting)と呼ばれます。

また覆輪(フクリン)留めは「伏せ込み」と呼ばれることもありますが、「伏せ込み」はもっと広い意味を持ちます。

「伏せ込み」は金属の周りの金属を一周叩いて宝石を留める技法全般のことを指します。

例えば結婚指輪の表面にリング幅よりも小さな宝石をはめ込み、周りの金属を倒して留める場合も「伏せ込み」と呼ばれます。

伏せ込み

本来“覆輪”と言う言葉は、カッチュウ、器、着物、馬具などの縁取り装飾のことを指します。

つまり覆輪留めは、あくまで、宝石の縁を金属が取り巻くような形のみを指します。

覆輪留めは「伏せ込み」の一種と言えるでしょう。

 

覆輪留めによって金属に隠れる宝石の面積

覆輪(フクリン)留めによって、金属に隠れる宝石の面積は、

ファセットカット(細かなカットが施され面が多くある宝石。一般的に上が平たく下に尖りがある形)の場合、真上から見て、周りの金属が、少なくとも約0.1-0.3mmほど宝石に覆い被さる形であればしっかり留めることができます。

 

カボションカット(上がドーム状の宝石)の場合は、しっかりと宝石を留めるには、少なくとも0.5mmほどの高さの金属が必要になります。

ただ、石の隠れる高さが底面から0.5mmでよいのかというとそうではありません。

カボションカットは横からみると、底の方にはカーブがかかっておらず、垂直になっている部分があることが多いです。

垂直部分の長さ、つまりカーブの始まる位置はそれぞれの宝石によって異なります。 

カーブの始まる位置から0.5mmの高さを出した石枠を用意するして石留めをする必要があります。


覆輪留めのメリット・デメリット

 覆輪留めのメリット

覆輪留めの最大のメリットは

①衣服への引っ掛かりがないこと

②石外れの心配がないこと

です。

 

覆輪(フクリン)留めは、石周りがつるりと凹凸のない仕上がりです。

爪留め(4点や6点などで留める技法)は、衣服の脱着時に、爪がセーターなどに引っかかってしまうことがあります。

爪が引っ掛かると、衣服のほつれたしまう以外に、爪が開き宝石が意図せず外れてしまう可能性がありますが、覆輪留めの場合そのような可能性がないことがメリットです。

  覆輪留めのデメリット

覆輪留めの最大のデメリットは、光が入りにくくなるため、宝石が暗く見える可能性があることです。

覆輪留めによって宝石が暗く見えるかどうかは宝石の種類の他に、形状によって変わってきます。カットによって光の屈折の仕方が変わるためです。

大きさがあり枠の影の影響に印象を左右されないもの、輝きの強いもの、光の屈折を計算されたカットのものは、見え方には大きな変化がない場合が多いです。

ですが、ものにより目に見えて暗くなる場合があるのは確かです。

 

[覆輪留めに光を取り込む方法]

覆輪留めによって、石が暗く見えてしまうことが心配される場合、深さのある石の場合は、石枠のデザインによって緩和することができます。

枠を薄くして、横から見た時に宝石の下側が出る形にしたり、

 

枠の側面に窓をつけると光を取り込むことができるようになります。 

これらの方法は爪留めでも有効です。

 

 

覆輪留めの石枠と作られ方

ここからは技術的な話になります。覆輪留めの石枠がどのようにして作られるのか、そして、それぞれの作り方のメリット・デメリットは何かをお話します。

まず、ジュエリーの作られ方は大きく分けて下の3つになりますが、覆輪の枠の作り方もこの3つの方法が使われます。

①彫金(ちょうきん)技法

②ワックス製法(鋳造技法)

③3D CAD(鋳造技法)

 

①もっとも歴史の古い製作方法で、③が最も新しい技法になります。

 

 

①彫金技法について

「彫金技法」とは、金属を叩いたり曲げたり削ったりしてジュエリーを形作る方法のことです。

彫金での覆輪石枠の作り方は大きく3種類あります。

<一つ目>側面と底面を張り合わせる方法

側面用に、0.5mm厚ほどの薄い板を細長く切った金属を、底面用に板状の金属を用意します。

薄く細長い金属石をぐるりと囲える輪っかを形成します。そこに底板を取り付けます。

輪の継ぎ目や、底板の取り付けは、ロウ付け言って溶けやすい金属を接着剤がわりにしてバーナーで熱を加えて溶接をします。

<二つ目>側面と底面も一つの金属でつくる方法。

先ほどは側面に薄く細長い金属を使いましたが、今度は1mm前後の先ほどののり厚みのある細長い金属を用意します。

細長い金属を石をぐるりと囲える輪っか状に形成し、継ぎ目を溶接したら、石がはまるように、金属に溝を彫ります。

<三つ目>L字ワイヤーで作る方法

二つ目のものをもっと簡略化したものです。L字の細長い金属を用意して、石をぐるりと囲える輪を作る方法です。こちらはジュエリーよりも安価なアクセサリーに使われることが多いようです。

1つ目2つ目の方法の方が綺麗な形を作ることができるためです。 

 

②ワックス製法→鋳造(ちゅうぞう)技法

「鋳造技法」とは、型に金属を流し込んでジュエリーを形作る方法のことです。

ワックスと呼ばれるジュエリーの原型を形成するための蝋を用います。

ワックスでの覆輪枠作りの方法もいくつかありますが、一般的な方法はこのようになります。

板状のワックスを2つ用意し、石より少し大きな四角形にカットします。

1枚は枠になるように、石が入る穴を開け、2枚の板を重ねて溶かし付けます。

あとは、枠の厚みを残すようにして、四角い形状を石の形になるよう外側を削っていき、枠の形にして原型は完成します。

 

あとは、この原型を石膏で型取りして金属を流し込み形づくる、鋳造(ちゅうぞう)を行い金属をジュエリーの形にしていきますが、鋳造技法について詳しくはここでは省略します。

③鋳造技法(3D CAD技法)

3D CAD(スリーディー・キャド)技法とは、パソコンやiPadを使ってジュエリーをデザインする方法です。画面上でデザインした形はそのまま3Dプリンターでジュエリーの原型として樹脂などの素材で印刷することができます。

3Dプリンターで印刷した造形物の素材は、キャスタブル(castableとは“鋳造が可能な”という意)といってそのまま鋳造ができる性質のものもあります。

キャスタブルでない樹脂製などの造形物を、ゴム型をとってから、ワックスに置き換える方法もあります。

3D CADで覆輪枠を作ることももちろん可能です。

①彫金技法と②ワックス技法に異なりなりメリットとしては、整った形を作ることができること、完成イメージを分かりやすくみることができることがあげられます。

 

3つの覆輪枠の造形方法をあげましたが、製作者側にとってはどれもメリット・デメリットがあり、どれがいい、とは一概に言えません。

また、完成品も、覆輪枠というシンプルなものであれば作り込んであるものであれば、違いは分からないレベルです。

同じブランドであっても場合により作り方を方法を使い分けたりもします。

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